子離れ/親離れ(その一)
土曜日, 1月 2, 2010 at 11:19午前
Naoyuki Maruya in 子育て, 子育て, 子離れ, 親離れ

ある大手の会社の健康管理室から紹介されてきた六十代の夫妻が二十代の子息のために来談しました。大学を卒業して就職した会社で上司から厳しく扱われ、その上司の前では声が出なくなって、会社にも行かなくなったということでした。

特に、母親は毎日家に一緒にいますので部屋に閉じこもっている息子のことが心配でどう接したらよいか分からない状態でした。父親は、少し放っておけ、という態度なのですが、家に帰ると妻から毎晩のように不安を訴えられるので、そのことの方が息子のことより悩みの種でした。

最終的には、この息子も来てカウンセリングを受けるようになったのですが、母親の過干渉と父親が殆ど仕事のゆえに子供との関わりを持たなかったために、大学卒業後も精神的な自立が出来ていなかったためでしたが、母子分離をしつつ、子離れと親離れを同時に試みながら、子供が以前過ごしたことのある、アメリカに語学留学と将来したいと思っていた農業研修に旅立つということで、カウンセリングは終了しました。

不登校、摂食障害、社会的引きこもり等の短期間には解決不可能な(成人した)子供の問題は、子離れ/親離れという視点から見る時に新しい対応が可能にすることもあります。

勿論、それ以外の問題も見逃してはなりませんが、現代の問題の特徴である問題の複合性の一側面としては、この子離れ/親離れの要因は無視できません。

1.親離れは早くから始まる 

二十歳や三十歳になっても親離れしていない場合もありますが、自立の芽は一歳前から始まることを知っている人は殆どいません。ということは、自立は、親との関わり方でその基礎が出来るということです。私のカウンセリングの土台は関係対象論の理論からですが、これは、一番初めに関わった関わり方が、その人の生涯の人間関係を左右するということです。したがって、自立は生まれた時からの親との関わりから始まるといっても大げさとはいえません。自立を助ける関わり方、あるいは育て方は、まさに、親離れ/子離れの実践なのです。

それではどのような関わり方が親離れ、つまり、自立を助けるのでしょうか。

ゼロ歳から五ヶ月:親自身の存在が自立の基礎

生まれて間もない乳児は、しばらくの間は母子一体感の中に過ごしますが、体内から生まれ出た赤ちゃんは、周りで起こる変化に過敏に反応します。特に、恐怖感や不安感を与える音などには何が起こったかが認識できませんから、泣き出すでしょう。母親が落としたなべの音の響きなどは、床に寝かされている赤ちゃんには堪えるでしょう。

そのような時に、母親が愛情を持って抱っこして上げるなら、限りない安心感を与えられます。このようなことを繰り返していく時に、赤ちゃんの内面に、例え、ある時は抱っこしてもらえないことがあっても、心配ないのだというフィーリングが生じてくるようになるのです。このようなフィーリングこそ、自立の基礎であり土台です。

逆に、親が抱っこしてあげても親自身が不安感を持っていたり、又、落ち込んでいたりすると、赤ちゃんは大丈夫だという安心感がもてません。育児の不安や自分自身の心理的な問題が解決していない、あるいは、夫婦間に葛藤があるとなると、子供に対する影響は絶大です。

このような問題を抱えて成長すると、新しい環境に入るのに時間がかかったり、また、困難だったりすることがあります。つまり、自立に不安を感じる始まりといえます。

自立の土台は、やはり、深い内面の安心感です。そして、これは、親との関わり方と親自身の内面によって決まるといってよいのです。

 

Article originally appeared on 丸屋真也・IFM・家族・結婚研究所 (http://www.ifm-soudan.org/).
See website for complete article licensing information.