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日曜日
12062009

熟年夫婦の危機の克服

熟年離婚がドラマになるような社会になっていますが、現実に熟年になってから離婚するという夫婦が増えていることは紛れもない事実ではないでしょうか。理由は色々考えられますが、自立という視点からもその原因を探ることができます。熟年離婚の多くの場合は、銀婚式も終わり、結婚して30年を過ぎていることも珍しくありません。だからといって、決して幸せであったというのではないのです。その間、どちらかがずっと我慢してきたというのが殆んどです。

この我慢するというのが日本人の特徴であって、自立との関連でも見ることができます。今の熟年の夫婦にとっては、我慢することが美徳と思っていた年代かもしれません。しかし、この我慢こそが問題の原因となっていることも多いのです。我慢することと忍耐することは違うのですが、我慢は受動的で、忍耐は能動的な態度といえるでしょう。つまり、夫婦間に何か問題が生じたときに我慢するというのは、じっと何もしないで耐えることですが、この我慢から何の改善も解決も期待することはできません。相手に何か不満があっても言わないのです。相手から離婚を切り出された時に、そのような不満があったのならばどうして言ってくれなかったのか、と言われるのはまさにこの我慢の故です。

我慢は受動的ですので問題が些細なことでも解決することができませんので、問題が知らずのうちに蓄積してしまうのです。そして、その延長線上に熟年離婚という最悪の悲劇が起り得るのです。この受動的な関わりこそ「私」と「あなた」の境界線のないことのしるしといってよいでしょう。夫婦間の問題には必ずといってよいほど夫婦のどちらも何らかのかたちで原因となっており、片方だけというのはありません。従って、夫婦間の問題を改善するためには、互いが自分の境界線内のことに責任を取らなければ不可能なのです。つまり、互いが能動的に問題に対して対処しなければ片方だけでは夫婦間の問題を解決することはできないということです。

忍耐というのは、能動的だと述べましたが、それは問題に対して自分の境界線内のことには積極的に対処し、相手の領域に関しては待つという態度をとることです。もし待てなくて相手の領域の中に踏み込むのは能動的ではなく、攻撃的な関わりであって、自立している姿ではありません。従って、熟年離婚の予防策としては、夫婦間に何か問題があると感じた時には、早い段階で不満がある側がそのことを言葉で明確に伝えることです。不満があるのにもかかわらず、相手に伝えなければ、相手はそれでよいと思い込んでしまうのは仕方がないのかもしれません。「言ったってどうせ聞いてくれないし・・・」という態度を取るとするならば、それは受動的で自分の責任を果たしているとは言えません。夫婦にとっての愛とは、受動的にではなく能動的に関わることです。この愛のあるところには夫婦間に問題が起こらないというのではなく、たとえ起こってもそれを乗り越えることができるのです。そこから夫婦間に親密さが増していくのです。